口腔内には、虫歯の原因になるミュータンス菌(いわゆる虫歯菌)をはじめ、300種類以上の常在細菌がいます。
細菌が糖質と結びついてプラークを形成
プラーク(歯垢)とは、虫歯の直接の原因となる細菌のかたまりのことです。
口腔内の細菌が食べ物の残りカスに含まれる糖質を取り込むことにより、食後およそ8~24時間で形成されます。
プラークの排出する酸が歯を溶かす
プラークが歯の表面に付着し、糖質を栄養分として増殖すると、やがて歯を溶かす「酸」を排出し始めます。歯の表面を覆っているエナメル質は、酸に弱いため容易に溶けてしまいます。
その後、菌は歯の奥へ奥へと進んでいき、象牙質から歯髄(神経)、歯根まで達します。歯根まで達した菌は、根の先に膿の袋(根尖病巣)を形成することもあり、放置すると顎の骨にも感染を起こして骨膜炎という状態を招いたり、細菌が血管を巡って重大な全身疾患を引き起こしたりすることもありますので、日頃からの予防と早期治療が大切です。
歯石はプラークの温床
歯石はプラークが石灰化したものです。歯石は歯の表面や歯と歯のすき間に頑固にこびり付くため、歯みがきでは取り除くことが出来ません。
また、歯石が付いているところにはプラークが溜まりやすいので、歯科医院で取り除くことが大切です。
歯の痛み方と、虫歯の進行度
- 自覚症状が無い
- 虫歯はエナメル質内だけに留まっており、自覚症状がありません。この段階で、治療を受けるのが理想的です。
- 甘いものがしみる
- 浸透圧の関係で甘いものがしみることがあります。
- 冷たいものがしみる
- 虫歯が象牙質に達すると、冷たいものがしみるなど自覚症状が現れます。
- 熱いものがしみる
- 虫歯が歯髄(神経)まで達しており、急性の炎症が起きることで熱いものがしみることがあります。虫歯がかなり進行している状態です。
- 何もしないでも痛みがある
- 虫歯がかなり進行した状態で、治療の際に麻酔が効きにくくなります。
- 長い間続いていた痛みが治まったので、そのまま放置している
- 痛みを感じる神経自体が虫歯により壊死している状態です。この状態を放置すると、やがて根に膿が溜まり、激痛をともなうことがあります。
進行度に応じた治療法
C0 初期の虫歯
C0は、歯の表面が脱灰し溶け始めた状態で、痛みはともないません。健康な歯の表面は透明感がありますが、脱灰が起こるとその部位が白っぽくなるのが特徴です。
以前は、歯を削る治療が行われていましたが、最近では適切な歯みがきやフッ素塗布などにより進行を防げるため、歯を削る必要はありません。
C1 歯の表面の虫歯
C1は、虫歯がエナメル質内に留まっている状態で、痛みはともないません。
治療も虫歯を削った部位にレジン(樹脂)を詰めるだけで済み、麻酔は使いません。
なお、使用するレジンは、光に反応してすぐに固まり、歯と同じ色に出来るので目立ちませんが、年月とともに少し変色していく特徴があります。
C1の段階で虫歯が発見出来ると、
- 1. 麻酔を使わなくて済む。
- 2. 一回の治療で済む。
- 3. 治療費用が高額にならない。
などの利点があるため、定期的な検診を受けるなどして、虫歯の早期発見・治療をすることが大切です。
C2 虫歯が神経近くの象牙質に達した状態
虫歯が象牙質まで達すると、進行も早くなります。神経に近づくにつれ、冷たいものがしみ、痛みを感じるようになります。治療方法としては、虫歯を削った部位にレジンを詰めます。この際、症状によっては局所麻酔をします。
また、削る部分が大きい場合は、型を取りインレーという部分的な詰め物をセットします。
C2の虫歯でも削る部分が広範囲に及んでいたり、一つの歯に複数の虫歯が出来ていたりする場合には、クラウンでの治療になることがあります。
クラウンを使用する場合は、インレーよりも治療期間は長くなります。
C3 歯髄(神経)まで達した虫歯
虫歯が神経まで達すると、熱いものがしみたり、何もしないのに激しい痛みをともなったりします。虫歯に限らず、体の痛みというものは、もうこれ以上放置すると危ないという体のシグナルです。虫歯で痛みを感じる段階は、かなり症状が進んでいるケースがほとんどです。
この段階になると、神経と炎症の起きている部位を取り除く根管治療が必要になる場合があります。
また部分的なインレーを使用することはほとんどなく、土台をセットした上で歯全体をすっぽりと覆うクラウンを被せる治療を行います。
C4 歯根部まで達し、歯が崩れた末期の虫歯
C4まで虫歯が進行すると、痛みを感じる神経そのものが壊死してしまうので、痛みを感じなくなります。さらに放置すると、根に膿を持つようになり、再び激しい痛みをともなうようになります。この段階になると、保存治療(歯を残す治療)も難しくなる場合もあり、麻酔も効きにくくなります。
治療方法としては、C3と同様にクラウンを被せるか、やむを得ない場合には抜歯をします。
抜歯を行った場合は、ブリッジや部分入れ歯、またインプラントを行う必要があります。
歯の喪失に用いられる治療法
- インプラント
- 自分の歯と同じように噛むことが出来ますが、インプラントを埋め込む手術が必要になり、治療費も高額です。
- ブリッジ
- 自分の歯と同じように噛むことが出来ますが、ブリッジを固定するために両隣の歯を削る必要があります。
- 入れ歯
- 短期間での作成が可能ですが、堅い食べものや粘りのある食べ物では、しっかり噛むことが出来ず、違和感を覚える場合もあります。
象牙質に囲まれた歯の内部には、歯髄と呼ばれる神経組織があり、様々な刺激を脳へ伝える神経とともに、無数の毛細血管が走っています。この毛細血管は、歯に栄養と酸素を供給する大切な役割を担っているため、歯髄が取り除かれて栄養や酸素の供給源が断たれた歯は、つやを失って黒褐色に変色する場合があり、歯の強度も下がります。
一般的に、治療した歯は再び虫歯(二次カリエス)になりやすく、特に神経を取り除いた歯は、二次的に虫歯になっても「痛い・しみる」などの自覚症状が無いため、かなり悪化してから気づく場合も少なくありません。
また、虫歯が歯髄まで達した場合は、根管治療が必要になります。この段階で放置すると、顎の骨まで達し、膿の袋(根尖病巣)を形成します。根の深部まで虫歯に浸食された歯は、抜歯するしかない場合がありますので、虫歯が歯髄に達する前にきちんとした治療と定期的な検診を受けることが大切です。
根管治療の流れ
根管治療とは、細菌や腐敗産物で汚れた根管を清掃消毒し、薬で隙間なく封鎖する処置です。虫歯の除去→根の清掃→根の消毒→根の再建という流れで、段階的な治療を行います。
虫歯により歯髄が炎症を起こしている場合、局所麻酔をして歯髄を除去(抜髄)します。
抜髄では、歯髄を取り除きながら根管を拡大し、清掃を行います。また根の細菌を完全に除菌する必要があるため、根管の中に薬を入れた状態(根管貼薬)で一時的に封鎖し除菌します。