歯周病とは

重度の歯周病歯周病には大きく分けて、歯肉炎、歯周炎があります。歯周病は、歯を支える歯肉や歯槽骨などの歯周組織を破壊し、その機能を侵す疾患です。そのため、歯周病により歯の周りの組織が壊れてしまうと、全く虫歯の無い歯でも抜けてしまいます。

歯を失う原因の第一位は歯周病

厚生労働省が平成23年に行った歯科疾患実態調査によれば、70歳以上の方の平均残存歯数(残っている自然歯の数)は20本を下回っています。
年々医学の進歩によって平均寿命が延びる一方で歯の寿命は依然として短く、高齢社会を生きる私たちにとって、「歯を残す」ことは重要な課題です。

また、歯周病にかかっている人の割合は、25歳~34歳で75%、35歳~64歳で80%というデータもあります。「歯を失わない」ためには、歯周病に対する正しい知識を身につけ、治療と予防を専門的に行うことが大切です。

歯周病は自覚症状の無いまま進行します

重度の歯周病歯周病は自覚症状の無いまま徐々に進行し、自覚症状が出た時にはかなり進行しています。
いったん進行すると、歯周病は自然治癒することはなく、専門の治療が必要となります。また1本ずつ悪くなるのではなく、全体的に進行するため、急激に数本の歯を失う場合があります。

歯周病の原因

バイオフィルム歯周病の原因となるプラークの75%くらいが歯の表面に付着した細菌で、白く柔らかい食べカスのように見えますが、実際にはプラーク1g当たり、1,000億~2,000億個の細菌と300~400種類の細菌で構成されています。
ブラッシングで適切にプラークが除去出来ない場合、プラーク中の細菌が集まり「バイオフィルム」が形成されます。このバイオフィルム中の細菌は、バイオフィルム外の細菌と比較して、抗生物質などの抗菌剤に対して約500倍の抵抗性をもっているため、内部の細菌をなくすことは極めて大変です。放置すると、プラークはさらに強固な歯石へと変性します。

歯石は、プラークが石灰化したもので、エンドトキシンという有害物質を含んでおり、悪さをするだけでなく、表面が粗いため、さらにプラークを集めます。また、プラークと違って歯磨きでは取り除くことが出来ませんので、専用の機器で除去する必要があります。
ただし、除去しても歯ブラシで適切に新しいプラークを除去出来ないような場合は、2週間以内に再び歯石の形成が始まります。

歯周病の危険因子

歯ぎしりや噛み合わせと歯周病
歯ぎしりや噛み合わせの状態が良くないと、歯を揺らして歯周病を悪化させます。また、歯周病により歯が浮くことで噛み合わせが悪くなり、歯周病を急速に進行させる場合があります。
喫煙と歯周病
血液には、全身の細胞が必要な酸素と栄養を運ぶ役割だけでなく、細菌を追い出す白血球も存在しています。そのため、喫煙により血管を収縮すると、血行が悪くなり免疫力が低下するため、細菌が原因である歯周病の原因となります。また、ビタミンCも破壊されて不足気味となり、歯周組織の細胞も弱くなるため、歯周病の原因となります。
全身性疾患と歯周病
糖尿病や免疫異常などの全身性疾患でも免疫力が低下するため、歯周病の原因となります。
女性と歯周病
一般的に女性ホルモン(プロゲステロン、エストロゲン)が多量に分泌される思春期や妊娠中などに歯周炎が生じやすくなると言われています。また、体の変調を生じたり、ストレスが重なったりする更年期(閉経を前後する数年、40~55歳頃)も歯周病になりやすくなるため、注意が必要です。
このほか、経口避妊薬(ピル)の使用もプロゲステロン値を上昇させるため、歯周炎に影響を与える場合があります。また、更年期障害や骨粗鬆症の治療においても、エストロゲンが用いられることがあり、歯周病に影響を与える場合があります。
このような女性特有の歯周病の危険性を理解し、日頃から予防と定期検診を行い、ケアすることが大切です。
その他の要因と歯周病
心身へのストレスや年齢、疲労などによる免疫力の低下、柔らかい粘着性の食物、歯並びの悪い状態、口呼吸と薬の副作用などによる口内の乾燥など、唾液による洗浄作用の低下は、歯周病の原因となります。

全身性疾患と歯周病

狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、血液障害、免疫異常などの全身性疾患も抵抗力の低下の為、歯周病に影響します。
血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、歯周病の予防や治療は、より重要となります。

狭心症・心筋梗塞

血管死を招くこともある狭心症・心筋梗塞の要因である動脈硬化は、不適切な食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣が要因とされてきました。
近年、別の因子として、歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化を誘導する物質が出ることが判明し、原因の一つとしてクローズアップされています。

脳梗塞

脳梗塞は、頸動脈や心臓から血の塊やプラーク(粥腫)が飛んで来たりして脳の血管に詰まる疾患です。歯周病の人は、健常者に比べて2.8倍も脳梗塞になりやすいと言われています。
このため、血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患の予防のためにも歯周病の予防や治療が大切です。

歯周病と糖尿病

歯周病は糖尿病の合併症の一つ
糖尿病以前から、歯周病は糖尿病の合併症の一つと言われてきました。実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いという疫学調査が複数報告されています。
近年では、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになっています。つまり、歯周病と糖尿病は、互いに悪影響を及ぼし合っていると考えられるようになったのです。歯周病治療により、糖尿病も改善することもわかっています。
歯周病菌と内毒素
腫れた歯肉から血管内に入った歯周病菌は、体の力で死滅するものの歯周病菌の死骸の持つ内毒素(エンドトキシンと言われる細菌の細胞壁に含まれる毒物)は残ります。血液中に残った内毒素は、脂肪組織や肝臓からのTNF-αの産生を強力に促します。このTNF-αは、血液中の糖分の取り込みを抑える作用があり、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きを阻害するため、血糖値に悪影響を及ぼすことがわかっています。
歯周病の治療による血糖コントロールへの影響
歯周病と糖尿病を合併した患者さんに、抗菌薬を用いた歯周病治療を行ったところ、血液中のTNF-α濃度が低下するだけでなく、血糖値のコントロール状態を示すHbA1c値も改善するという結果が得られています。

全身の健康に歯科が出来ること

歯周病も糖尿病も生活習慣病ですから、互いに深い関係があっても不思議ではありません。そのため、毎日の食生活を含めた生活習慣を見直し、歯周病を予防することが生活習慣病の予防につながります。
歯科医は口腔内の変化をみることの出来るプロです。口腔ケアも自分一人できちんと行うのは難しいと言われています。年に2~3回は歯科医院で検診し、口腔ケアを行うことをお勧めしております。

歯周病と妊娠

妊娠性歯肉炎
糖尿病一般的に妊娠すると、女性ホルモンの関係で歯肉炎にかかりやすくなると言われています。特にエストロゲンという女性ホルモンは、ある特定の歯周病原菌の増殖を促すことや歯肉を形づくる細胞がエストロゲンの標的となることが知られています。また、プロゲステロンというホルモンは、炎症の元であるプロスタグランジンを刺激します。
これらのホルモンは妊娠終期には月経時の10~30倍になると言われています。このため妊娠中期から後期にかけて妊娠性歯肉炎が起こりやすくなりますが、歯垢が残存しない清潔な口腔内では起こらないか、起こっても軽度で済むため、妊娠中は特に念入りにプラークコントロールを行いましょう。油断すると出産後に本格的な歯周病に移行する場合もあるので、注意が必要です。
このほか、稀に妊娠性エプーリスという良性腫瘍が出来る場合もありますので、その場合は早めに歯科を受診してください。
歯周病と低体重児早産
近年、妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産の危険度が高くなることが指摘されています。
これは口腔内の歯周病菌が血中に入り、胎盤を通して胎児に直接感染するせいではないかと考えられています。その危険率は実に7倍にものぼると言われ、タバコやアルコール、高齢出産などよりもはるかに高い数字です。
歯周病は治療可能なだけでなく、予防も十分可能な疾患です。生まれてくる元気な赤ちゃんのためにも、しっかり歯周病を予防しましょう。

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎とは、食べ物や異物を誤って気管や肺に飲み込んでしまうことによって発症する肺炎です。
通常、肺や気管は、咳をすることで異物が入らないようにしていますが、高齢になるとこれらの機能が衰えるため、食べ物などの異物と一緒に口の中の細菌を飲み込むと気管から肺の中へ細菌が入ることがあります。
その結果、免疫力の衰えた高齢者では誤嚥性肺炎を発症してしまうことがあります。特に、脳血管障害の既往のある高齢者に多くみられます。 誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは、歯周病菌であると言われており、誤嚥性肺炎の予防には歯周病のコントロールが大切です。

骨粗鬆症

骨粗鬆症とは
骨粗鬆症骨粗鬆症は、骨がもろくなって骨強度が低下し、骨折しやすくなる疾患です。日本では推定約1,000万人以上いると言われており、その約90%が女性です。
骨粗鬆症の中でも閉経後骨粗鬆症は、閉経による卵巣機能の低下により、骨代謝に関わるホルモンのエストロゲンの分泌低下により発症します。
歯周病と骨粗鬆症
閉経後骨粗鬆症の患者さんにおいて、歯周病が進行しやすい原因として最も重要と考えられているのが、エストロゲンの欠乏です。
エストロゲンの分泌が少なくなると、全身の骨がもろくなるとともに、歯を支える歯槽骨ももろくなります。また、歯周ポケット内では、炎症を引き起こす物質が作られ、歯周炎の進行が加速されると考えられています。
多くの研究で、骨粗鬆症と歯の喪失とは関連性があると報告されています。
したがって閉経後の女性は、たとえ歯周炎が無くても、エストロゲンの減少により、歯周病にかかりやすく、広がりやすい状態にあると言えます。
また、骨粗鬆症の薬としてよく用いられるビスフォスフォネート製剤(BP系薬剤)というのがあり、これを服用している方が抜歯などをした場合、周囲の骨が壊死するなどのトラブルが報告されています。歯周病でぐらぐらしているから自分で抜くという行為は大変危険ですので、必ず歯科医にご相談ください。

関節炎・腎炎

関節炎や糸球体(しきゅうたい)腎炎が発症する原因のひとつとして、ウイルスや細菌の感染があります。
口腔内には歯周病原性細菌など、関節炎や糸球体腎炎の原因となる黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などが多く存在します。
これら細菌が血液中に入り込んだり、歯周炎による炎症物質が血液に入り込んだりすることで、関節炎や糸球体腎炎が発症することがあります。

歯周病とメタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは?
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪蓄積を臍部の内臓脂肪面積100cm2以上と定義、ウエスト周囲径が男性で85㎝、女性で90㎝以上を基盤とし、さらに、1)血中脂質異常、2)高血圧、3)高血糖の3項目のうち2つ以上に異常所見が見られる病態です。
大きな特徴は内臓脂肪を基盤とすることであり、高血圧、高血糖、脂質異常の値がさほど高くなくても脳卒中や心筋梗塞の危険性が高くなります。
歯周病とメタボリックシンドローム
詳しいメカニズムは解明されていませんが、歯周病の病巣から放出されるLPS(歯周病菌由来の毒素)やTNF-αは脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性を増加させ、血糖値を上昇させます。また、重度歯周病患者では血中CRP値が上昇し、動脈硬化や心筋梗塞発症のリスク亢進と密接に関与すると考えられています。さらに、この慢性炎症が個体の老化を促進するという論文も発表されています。
このように歯周病とメタボリックシンドロームの関連性が注目されています。
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